不思議な対話


17回目

(〜)は私の心を文章化しています。
状況を説明することもあります。

世「こんにちは、行代ちゃん。」
行「こんにちは。」
世「暑いですなあ。」
行「夏だから当たり前じゃないの。」
世「まあ、そうなのですが私は非常に辛いです。」
行「私はそうでもないけど。」
世「行代ちゃんは『心頭滅却すれば火もまた涼し』ができるのですな。」
行「何それ?」
世「ああ。ええと。考えようによっては、火のように暑いものでも
涼しく感じることができる、ということです。」
行「別に考えてなんかないわよ。暑くないものは暑くない。ただ、それだけよ。」
世「ははあ。そうでしたか。」
行「人を悟りを開いたみたいに言わないでよ。」
世「失礼しました。でも、悟りは誉め言葉なのではないですか?」
行「世代さんの言い方が誉めてなかったのよ。」
世「うぐう。今日はありがとうございました。」
行「終わるのはまだ早いわ。」
世「もう、やり込められましたからいいです。」
行「思い出した。」
世「え?」
行「去年、怖い話をやるって言ってたでしょ。」
世「う。い。ああ。何のことやらさっぱりですな。」
行「ばっちり、思い出してるじゃないの。」
(世代の表情におびえが出ていた・・・と思う)
(ちなみに怖い話の件が出たのは対話7回目です)
世「いやあ、今日は涼しくて快適ですなあ。」
行「さっきと言ってることが逆よ。」
世「『逆もまた真なり』は数学的には正しくないのだ。」
行「話をそらそうとしたって無駄よ。」
世「ふうむ。やはり、怖い話ですか。」
行「そうよ。」
世「昔々あるところに・・・」
行「・・・。」
世「おじいさんとおばあさんがいました。」
行「それ、ただの昔話じゃないの?」
世「違います。ちゃんと聞いてくださいな。」
行「分かったわ。」
世「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ
洗濯に行きました。おばあさんが川で洗濯をしていると、
川の上流からどんぶらこどんぶらこと・・・」
行「それ、桃を割るとき桃太郎が死ぬ話でしょ。」
世「ううっ。オチを言ったら話が台無しですがな。」
行「そんなありきたりの話なんかしても、誰も
楽しめないに決まってるじゃない。」
世「ははあ。まあ、そうですな。」
行「私の話でも聞いて参考にしなさい。」
世「はい。」
行「あれは、ちょうど夏の終わり。そう、日が沈み終わった
頃だったわ。少し汗ばみながら、彼女は家へと急いでいたの。」
世「・・・。」
(世代はゴクリとつばを飲み込んだ)
行「『こういう日は出るのよ。』そう思ったのがそもそもの間違い。」
世「・・・。」
(出るのは痴漢かな?と懸命に気をそらす世代)
行「突然涼しい風が吹き抜けたわ。頬を風になでられたのよ。
誰かの手が触れていったような感じ。そっとやさしく・・・」
世「・・・。」
行「かいていた汗が一気に冷えていく。彼女は走ったわ。
家まではあと少し。『大丈夫よ。何も起きやしないわ。』」
世「・・・。」
行「家の前にたどり着いてほっとしたその時、後ろから声がしたの。
『あなた、とてもきれいね。』
冷たい女性の声だったわ。気温がどんどん下がってく。」
世「・・・。」
行「玄関は目の前にあるのに、前に進めない。それどころか
どんどん遠ざかってる。助けを呼ぼうにも声は出ない。」
世「・・・。」
(世代の声も当然出ない状態となっていました)
行「・・・。」
世「・・・。」
行「彼女は翌日死体となって発見されたわ。」
世「・・・うう。」
行「でも、その顔は醜くなっていて誰も彼女だと気付かなかったの。
その死体は身元不明として処理されたわ。」
世「・・・。」
行「きれいになった生き物はどこに行ったと思う?
今も生きてるかもね。」
世「・・・。」
行「どうだった?」
世「こ、こ、怖すぎます。終わりましょう。出ないうちに。」
行「そうね。でも、もう出てるみたいよ。ほら、あそこ。」
世「ううう。やめてくださいな。」
行「じゃあ、またね。」
世「そ、それでは、またです。」

次の対話は8月中旬です。

行代ちゃんへの応援メールは届きません。

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